歯がしみるのはなぜ？原因と今すぐできる対策

先日、患者さんとのお話の中で、

「最近、冷たい水を飲むと歯がキーンとしみるんです」

というご相談を受けました。

歯がしみる感覚って、あのキーンという、一瞬の痛みがなんともつらいものですよね。

実は、この「歯がしみる」という症状は、虫歯だけでなく、いくつかの原因が関係していることが多く見受けられます。

そこで今回は、

なぜ歯がしみるのか

そして

今すぐできる対策

について、ご紹介します。

1. 歯がしみるとはどんな状態？

「しみる＝痛み」と感じると、「虫歯かな？」と思う方が多いですが、実際には歯の表面の状態に問題があることが大部分を占めていますです。

歯の表面は「エナメル質」と呼ばれる、硬い層で覆われています。エナメル質には神経に繋がる管が届いていないため、刺激（痛いや冷たい、熱いなど）を感じることはありません。

その内側には「象牙質（ぞうげしつ）」という部分があり、そこには神経につながる象牙細管と呼ばれる細い管が通っています。

この象牙質が露出してしまうと、外からの刺激（冷たい・熱い・風など）が象牙細管から神経に伝わり、しみるという痛みとして感じているのです。

つまり、「歯がしみる」というのは、象牙質がむき出しになり、神経が刺激を受けているサインなのです。

2. 歯がしみる主な原因

では、なぜ象牙質が露出（むき出し）してしまうのでしょうか？

代表的な原因を5つ挙げてご紹介しますね

①歯ぐきが下がる（歯肉退縮）
②強いブラッシング（磨きすぎ）
③歯ぎしり・食いしばり
④酸による溶け出し（酸蝕症）
⑤虫歯や亀裂（クラック・ひび）

①歯ぐきが下がる（歯肉退縮）

加齢や歯周病、強いブラッシング圧によって歯ぐきが下がると、歯の根元（本来は歯ぐきに隠れている部分）が露出（むき出し）します。

この部分には裏打ちとなるエナメル質がなく、象牙質がむき出しになるため、冷たい飲み物や歯ブラシの毛先が当たるだけで「キーン」としみやすくなります。

②強いブラッシング（磨きすぎ）

「しっかり磨かないと」とつい力を入れすぎてしまうと、歯の表面を物理的に削ってしまうことがあります。

特に硬い毛の歯ブラシで強く磨くことがお好みの方や、大きめのストロークで横磨きを続けている方は要注意です。

エナメル質がすり減る（磨き減る）と、内部の象牙質が露出して、しみる原因になります。

③歯ぎしり・食いしばり

歯ぎしりや食いしばりが強いと、エナメル質が少しずつ欠けたり、歯の根元にチッピングが起こり「くびれ（くさび状欠損）」ができたりします。

その部分から象牙質が露出し、しみる症状を引き起こします。

夜寝ている間の歯ぎしりは無意識で行なっているため、朝起きると歯が浮いた感じがする」「顎が重い」などの症状が思い当たる場合には、注意が必要です。

④酸による溶け出し（酸蝕症）

炭酸飲料・お酢・ワイン・スポーツドリンクなどを頻繁に摂ると、口の中が酸性に傾き、エナメル質が溶けてしまうことがあります。

酸でやわらかくなった歯は、ブラッシングの刺激でも削れやすくなり、しみやすい状態になります。

⑤虫歯や亀裂（クラック・ひび）

もちろん、虫歯や歯のひび割れが原因の場合もあります。

虫歯は冷たいものだけでなく、甘いもの・熱いものにも反応しやすいのが特徴です。

また、歯に小さな亀裂があると、その隙間から神経に刺激が伝わることもあります。

3. 「知覚過敏」とは歯がしみる代表的な病名

これまでご紹介したような「刺激で痛みを感じる」状態を、知覚過敏（ちかくかびん）と呼びます。

知覚過敏は一時的なもので、瞬間的にしみた後、少しすると痛みが消えるのが特徴です。

ただし、「虫歯」や「歯の神経の炎症である歯髄炎（しずいえん）」「歯の亀裂」などが原因の場合は、ズキズキ痛みが続いたり、夜間に痛みが出たりするため、早めの診断が大切です。

「ただの知覚過敏かも」と自己判断せず、歯科でのチェックをしてもらうと安心につながります。

4. 今すぐできるセルフケア・対策方法

では、歯がしみるときにすぐできるケアにはどんなものがあるでしょうか？

今日からできる対策を5つ紹介します。

①やさしく磨く・正しいブラッシングの力加減にする
②知覚過敏用歯みがき粉を使う
③酸性飲料をだらだら飲まない
④歯ぎしり対策（ナイトガード）
⑤定期的な歯のチェック

①やさしく磨く・正しいブラッシングの力加減にする

歯磨きをする時にかかる力をブラッシング圧と呼びます。理想の圧は「150g〜200g程度」です。

1本ずつ、なでるようにやさしく磨くことが基本となります。

実際には歯ブラシを爪に当てて、少し白くなるくらいがおおよその力加減だと思ってください。

また、硬い毛の歯ブラシよりも「やわらかめ」または「ふつう」がおすすめです。

②知覚過敏用歯みがき粉を使う

市販の知覚過敏ケア歯みがき粉（シュミテクト®など）には、「硝酸カリウム」や「乳酸アルミニウム」が配合されており、象牙質の管を封鎖して刺激を伝わりにくくする働きがあります。

使い始めてから数日〜数週間で効果が出てくることが多いので、継続が大切です。

③酸性飲料をだらだら飲まない

炭酸水や果汁飲料、スポーツドリンクなどを長時間口に含むと、口の中が酸性に傾き、エナメル質が溶けやすくなります。

飲んだ後は水で軽くすすぐ、またはガムを噛んで唾液を出すことで中和を促しましょう。

※すぐに歯を磨くのはNG！ 酸で柔らかくなった歯を削ってしまう恐れがあります。

飲んでから30分ほど置いてから、歯磨きを行うと安心です。

④歯ぎしり対策（ナイトガード）

夜間の歯ぎしり・食いしばりがある方には、歯科医院で作るマウスピース「ナイトガード」がおすすめです。

歯を守るだけでなく、顎の負担も軽減してくれます。

ご自身では気づきにくいので、「朝起きると歯が痛い」「冷たいものが染みる」という方や、ご家族などから指摘を受けた方は一度ご相談くださいね。

⑤定期的な歯のチェック

歯の状態を定期的にチェックすることで、歯ぐきの退縮や初期の虫歯を早めに発見できます。

フッ素塗布や知覚過敏抑制材（コーティング剤）など、歯科医院でできる予防ケアも効果的です。

5. 歯科で行う治療法

セルフケアで改善しない場合は、歯科医院で以下のような治療を行うことがあります。

①知覚過敏抑制材の塗布
②フッ素塗布
③レジン（樹脂）によるコーティング
④神経の処置

①知覚過敏抑制材の塗布

歯の表面に薬剤を塗って、象牙質の細い管を封鎖します。

短時間で処置ができ、痛みもほとんどありません。

②フッ素塗布

フッ素には、歯の再石灰化を促す働きと、刺激を伝わりにくくする効果があります。

歯科医院で定期的にフッ素を塗布することで、しみる症状の軽減が期待できます。

③レジン（樹脂）によるコーティング

象牙質が大きく露出している場合は、歯の色に近い樹脂でカバーします。

見た目も自然で、刺激から歯を守ることができます。

④神経の処置

しみる症状が強く、知覚過敏ではなく歯髄炎（神経の炎症）と診断された場合は、根管治療（こんかんちりょう）を行い、痛みの原因を取り除きます。

6. 放っておくとどうなる？

「たまにしかしみないから大丈夫」と放置すると、歯ぐきの退縮やエナメル質の摩耗が進行し、慢性的な痛みへ発展することもあります。

また、強いブラッシングや食いしばりを続けると、歯の根元が欠けてしまい、虫歯にもなりやすくなります。

しみるというサインは、「歯が守りを失いかけている」証拠。

早めに対応することで、歯を長く健康に保てます。

7. まとめ

いかがでしたか？

歯がしみる原因は「虫歯」だけでなく、歯ぐきの下がり・磨きすぎ・食いしばり・酸・加齢など、さまざまな要因が重なって起こることが多いです。

まずは生活習慣やブラッシング方法を見直してみましょう。

それでも改善しない場合は、早めに歯科でご相談ください。

知覚過敏は、早めに対処すればほとんどの場合改善できます。

「しみるのが当たり前」と思わず、歯を守るチャンスと考えてくださいね。

日常の小さな違和感が、歯の健康を守る大切なきっかけになります。

どんな些細なことでも、ぜひ気軽にご相談ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。