その差し歯、色が変わる?差し歯の素材別変色リスクと対策

目次
はじめに
「昔入れた差し歯が、最近なんとなく色が浮いて見える気がする」
「歯ぐきとの境目が黒ずんで、写真で気になるようになってきた…」
このように、差し歯の変色に悩み、その相談で来院される方は多くいらっしゃいます。来院に至らないまでもどうしたものかとお悩みの方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
最初は自然で白かった差し歯も、年月とともに少しずつ変化してくることがあります。
差し歯の変色は、素材の特性や使用年数、お手入れの仕方によって程度が異なります。
また、変色の原因によっては、歯科医院のクリーニングで対応できるケースもあれば、作り直しが必要なこともあります。
今回は、「なぜ差し歯が変色するのか」「どうすれば防げるのか」「変色してしまったらどうすればいいのか」などについて、素材ごとの違いや治療法を含めて、ご紹介します。
白く美しい歯を長持ちさせたいという方は、ぜひ参考にしてくださいね。

差し歯が変色する原因とは?
差し歯の変色には、いくつかの原因があります。素材そのものの性質だけでなく、接着剤や土台、歯ぐきとの関係など、さまざまな要素が影響しています。
このコラムでは、代表的な3つの原因について解説します。
①経年劣化による変色
②接着剤や土台の影響
③歯ぐきとの境目の黒ずみ

①経年劣化による変色
特に、保険診療で使われるレジン(プラスチック)素材は、時間が経つと水分や色素を吸収し、黄色っぽく、くすんでくることがあります。
これはコーヒーやお茶、カレーなどの色素が原因となることも多く、毎日の食生活や喫煙習慣も大きく関係しています。
②接着剤や土台の影響
差し歯は、接着剤や土台(コア)で歯に固定されています。
この接着剤が変色したり、内部の金属が透けたりすることで、差し歯全体がくすんで見えることがあります。
特に、保険診療の差し歯では、金属の影響が表面に現れやすいことが知られています。
③歯ぐきとの境目の黒ずみ
差し歯と歯ぐきの間に、うっすらと黒いラインが見えてきた、というお悩みもよく聞かれます。
これは、差し歯の内側に使われている金属が透けて見えてきたり、歯ぐきが年齢とともに下がって境目が露出したことが原因で起こります。
この状態は、見た目に大きく影響してきます。
このように、差し歯の変色にはいくつかの要因が重なって起きることが多く、お一人おひとり原因が異なります。
続けて、差し歯の素材別の変色リスクについて詳しく見ていきましょう。
3. 差し歯の素材別に見る変色リスク
「最初は真っ白だった差し歯が、最近くすんできたような気がする…」
そうしたお悩みは、実は、多くの方に共通しています。
差し歯は素材によって変色のしやすさが異なり、それぞれに特徴や注意点があります。
ここでは、代表的な素材について3つ、変色のリスクや対策をわかりやすくご紹介します。
①レジン前装冠(保険診療で使われる差し歯)
②セラミッククラウン
③ジルコニアクラウン

①レジン前装冠(保険診療で使われる差し歯)
保険適用で使用される「レジン前装冠」は、金属のフレーム(枠組み)の上にプラスチック(レジン)を貼り付けた差し歯です。
このタイプは費用を抑えられる点が大きなメリットですが、時間の経過とともに変色しやすく磨き残しが付きやすいというデメリットがあります。
レジンは水分や色素を吸収しやすい素材のため、日常的にコーヒー、紅茶、カレー、ワインなどを摂取する方は特に注意が必要です。
変色を予防するのに取り入れやすい方法は、色の濃い飲食物を摂ったあとは水で口をすすぐ、またはこまめな歯みがきを心がけることが効果的です。
しかし、変色が進んでしまった場合は、表面をいくら磨いても元の色に戻すのは難しく、多くの場合で「作り直し」が必要となります。
②セラミッククラウン
セラミッククラウンは、見た目の美しさと耐久性を兼ね備えた素材です。天然歯に近い透明感があり、見た目がとても自然で、変色しにくい素材として人気のある差し歯です。陶器と似た性質を持ち、色素の吸収がほとんどないため、長期間白さを保ちやすいのが特徴です。
ただし、強い衝撃に弱く、欠けたり割れたりするリスクはあります。
また、セラミックの内側に金属の土台を使用している場合、経年変化によって歯ぐきとの境目が黒っぽく見える「メタルマージン」が目立つことがあります。
これはセラミックの変色ではなく、土台となる金属の影響による変化です。
より美しさを追求したい方には、金属を使用しない「オールセラミック」や「ジルコニア」を用いたタイプが安心です。
表面に軽い着色が見られた場合でも、定期的なクリーニングで改善できるケースが多く、基本的には変色リスクの低い素材といえます。
③ジルコニアクラウン
セラミックの中でも特に強度に優れた素材。白く美しい見た目と、変色しにくさを両立した優秀な差し歯です。
金属を使わないため、歯ぐきとの境目が黒ずみにくいのも大きなメリットです。
ジルコニア自体が変色することはほとんどありませんが、日常の飲食による「表面の着色」は少しずつ起こりうるため、定期的なメンテナンスが大切です。
表面の汚れが気になる場合は、歯科医院でのプロフェッショナルクリーニングで元の白さを保つことが可能です。
また、ジルコニアには透明感のあるタイプとややマットなタイプがあります。
前歯に使用する際は、審美性を高めるためにセラミックと組み合わせたタイプ(ジルコニアセラミック)が選ばれることもあります。
価格はやや高めですが、審美性と耐久性を兼ね備えています。
まとめ
いかがでしたか?
ここまでお話したことより、もっとも変色しやすいのはレジン前装冠であることがご理解いただけるかと思います。日常生活の中での着色や経年劣化による黄ばみが起きやすく、変色が進んだ場合は再製作が必要になるケースも少なくありません。
セラミッククラウンは変色しにくい素材ですが、内側に金属がある場合は歯ぐきとの境目に黒ずみが出る可能性があるため、オールセラミックの選択が安心です。
ジルコニアクラウンは、変色しにくさ・耐久性ともに非常に優れており、現在でもっともおすすめされる素材のひとつです。

差し歯は一度入れると、長く長く付き合うものです。
見た目の自然さや変色リスク、将来的なメンテナンスのしやすさまで含めて、素材選びを考えていくことがとても大切です。
「どれを選べばいいのか分からない」「今の差し歯がくすんで見える」など、気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談くださいね。
最後までお読みいただきありがとうございました。