入れ歯を作る時には欠かせない『型取り』について
こんにちは、土呂駅あつ美歯科クリニックです。
先日、患者様からこんな質問をいただきました。
『おばあちゃんが総入れ歯を新しくするから、今日は型取りなの。と言って歯医者に出かけて行ったのだけれど、一体どんなことをするんでしょうか』と質問を受けました。
総入れ歯作製の際には、まずは型取りから行っていきます。
そこで今回は、総入れ歯の製作過程について特に初めのステップ、入れ歯を作る時には欠かせない『型取り』についてご紹介します。
初めての方にとっては、何をしているのかよくわからない部分も多いかと思いますので、詳しく説明していきますね。
目次
〜総入れ歯の型取りのステップ〜
①型取りのファーストステップはアルギン酸
②既製のトレーで大まかな型取り
③こだわりの石膏(せっこう)注入
④オーダーメイドの専用トレーを作成
⑤ラストステップは専用のトレーとコンパウンドとシリコンで型取り
①型取りのファーストステップはアルギン酸
入れ歯の型を取るために使う材料は印象材と呼ばれていて、かまぼこを作るときと同じ「アルギン酸」が主成分の素材です。
これは歯科医院ではもっとも使われる型取りの素材で、海藻由来の成分が含まれています。水と混ぜることで数分ののち固まって型を取ることができます。このアルギン酸を使って、歯や歯茎の形状をしっかりと捉えます。
このアルギン酸で型取りを行う際にも、きちんと水とアルギン酸の量を計量していきます。その後、均一に練り上げられるように、専用の練和器を使用し練り上げていきます。
②既製のトレーで大まかな型取り
練り上がったアルギン酸は、既製品のトレー(型取りのための道具)を使っての大まかな型取りを行っていきます。このとき既製品を使って型をとるので、どうしても細かい部分、例えば奥歯の歯茎のあたりが少し当たったり、違和感が出ることがあります。この型取りは、次のステップで患者様専用の型を作るための第一段階となります。
③こだわりの石膏(せっこう)注入
型取った型をもとに、石膏を流し込んで患者様の口内の形を正確に再現します。この石膏を使う際にも、水と石膏との割合(混水比と言います。)を特殊な秤で正確にパーセンテージを計ります。
練り合わせる時に空気が入らないように、真空練和器と言われる空気を抜き、均一に練り上げる専用の機械を使います。
練り上がった石膏を型取りしたトレーに流し込みます。この時、しっかりと空気を抜いた石膏がないと(脱泡と言います)、出来上がった石膏模型に空気が入ってしまい、空気の穴が空いた石膏模型ができてしまいます。
石膏を流し終わったら、固まるまでの規定の時間を計り、アルギン酸をトレーから外します。
このような工程を経てようやく1つの模型が完成し、出来上がった模型はお口の中の歯ぐきの状態を忠実に再現していきます。
④オーダーメイドの専用のトレーを作成
出来上がった模型を使いオーダーメイドの専用トレーを製作していきます。さらに精密な型取りを行いますが、これはお洋服で言うと既製品からオートクチュールへと進化するようなものです。専用のトレーを使うことで、よりフィットし、痛みや違和感の少ない状況で型をとることができます。
⑤ラストステップはコンパウンドとシリコンで型取り
コンパウンドと呼ばれる温めると柔らかくなり、冷たくなると硬くなる材料を使い、大きくお口を開けたときやすぼめた時、イーっと口を横にした時などの筋肉の動きを再現していきます。その後にシリコンで出来た印象材を流し、お口の中に入れて詳細な型取りが完成します。
その後に、アルギン酸で行ったのと同様に石膏を流し、ようやく入れ歯製作に使う模型が完成します。
〜総入れ歯作りで大切なこと〜
総入れ歯がしっかりとフィットするためには、口の中の筋肉の動きや、入れ歯の大きさの設定がとても重要になります。お口の中は元々歯のない部分の歯茎は柔らかく、歯があった部分は硬いという特徴があります。これを型取りの段階で正確に反映させることで、その方その方にあった形の入れ歯が口にしっかりと収まり、快適に使えるようになります。
しっかりと段階を重ねてもお口の中は生体ですから、材質の硬い入れ歯を装着する場合、どうしても調整は必要になります。ですが完成後のなるべく調整が少なくなるよう、微調整で済むよう、取り組んでいます。
何度も型を取る過程は、お口いっぱいに材料やトレーが入るため、少し手間に感じるかもしれませんが、そのご協力のおかげで最終的に快適な入れ歯に繋がっています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
入れ歯の製作には、いくつかのステップが必要で、今回は大まかな型取りを中心にお話しました。総入れ歯の製作は、完成までに少し時間がかかることがありますがその分、患者様にとって快適なものを提供できるよう、段階を追って丁寧に治療を行います。
入れ歯にお困りの方など、何かご質問があれば、いつでもお気軽にお尋ねくださいね。
最後までお読みいただきありがとうございました。