「差し歯」について知っておきたい基礎知識

差し歯は見た目や噛む力を取り戻すための大切な治療ですが、実際のところ費用はどのくらい?寿命や交換のタイミングは?
このコラムでは意外と知られていない差し歯のことや、最近の歯科治療のトレンドをわかりやすく解説します。
費用感と相場はどれくらい?
差し歯の治療費は、保険適用か自費診療かによって大きく異なります。
①保険診療のレジン前装冠:4,000〜6,000円程度(1本/3割負担の場合)
②自費診療のセラミッククラウン:80,000〜150,000円程度(1本)
③ジルコニアクラウン:100,000〜180,000円程度(1本)
※費用はクリニックにより異なります。
事前に見積もりや説明をしっかり受けることが大切です。
自費診療は高額ですが、長期的な審美性・耐久性を考えるとコストパフォーマンスは高いといえます。

差し歯の寿命と交換の目安
差し歯にも寿命があり、一般的には7〜10年程度が目安とされています。
素材やお口の環境、セルフケアの状態によって前後しますが、見た目や機能の面で徐々に劣化が進んでいきます。
特に以下のようなサインが見られた場合は、早めの交換を検討することが大切です。
①明らかに色がくすんでいる・変色している②歯ぐきとの境目が黒くなってきた
③ぐらつきや違和感がある
④中で虫歯や劣化が起きている

①明らかに色がくすんでいる・変色している
変色が進むと、周囲の歯との色の差が目立ち、笑ったときや話したときの印象にも影響します。
クリーニングで落ちない着色がある場合は、差し歯自体の交換が必要なケースもあります。
②歯ぐきとの境目が黒くなってきた
金属の土台(メタルコア)を使用している差し歯では、金属が透けたり溶け出したりして黒ずみが現れることがあります。
これは見た目だけでなく、歯ぐきへの影響(炎症や退縮)を起こすこともあります。
③ぐらつきや違和感がある
かぶせ物が少しでも動いている感覚がある場合、内部で接着剤が劣化している、虫歯が再発している、土台の歯が割れているといったトラブルの可能性があります。
放置すると状態が悪化し、抜歯が必要になることもあるため、注意が必要です。
④中で虫歯や劣化が起きている
差し歯の中は見えませんが、むし歯が差し歯の中で進行しているケースもあります。
レントゲンや歯科医師の検査で発見されることが多く、「治療済み=一生もつ」ではないということを覚えておくことが大切です。
差し歯は放っておくと、土台ごとダメになってこともあるため、「ちょっと気になるかも?」と思った段階での受診が理想的です。
定期的なチェックと適切なメンテナンスで、差し歯の寿命をできる限り延ばしていきましょう。

審美歯科での最新治療法とは?
最近では、審美歯科の分野で、より自然で美しく、かつ耐久性にも優れた差し歯の治療法が次々と登場しています。従来の保険適用の治療に比べ、見た目・機能の両面で大きく進化しているのが特徴です。
以下のような最新技術が注目されています。
①フルジルコニアクラウン②CAD/CAM(キャドカム)冠
③デジタルシェードマッチング
①フルジルコニアクラウン:より強く、透明感のある白さを実現
ジルコニアは金属に匹敵する強度を持ちつつ、セラミックに近い自然な透明感を併せ持つ素材です。強く割れにくく、長期間の使用でも変色しにくいのが特徴です。
奥歯など強い力がかかる部位にも使用でき、見た目も白く自然で、金属アレルギーの心配もありません。
②CAD/CAM(キャドカム)冠:デジタル技術で正確な形と色を再現
CAD/CAMとは、コンピューターを使って歯の形状を設計・加工するシステムです。
高精度かつスピーディーにクラウンを作製できるため、型取りの精度が高く、ぴったりと合った差し歯を提供できます。
また、デジタル保存されたデータにより、破損や再製作の際にも迅速な対応が可能になります。
③デジタルシェードマッチング:隣の歯にぴったり合った色を再現
色合わせの技術も進化しており、デジタルカメラや専用スキャナーを用いた「デジタルシェードマッチング」では、隣の歯と見分けがつかない自然な色合いを再現できます。
従来のように色見本で選ぶ方法よりも、個々の歯の微妙な色や透明感、光の反射まで忠実に再現できるのが特徴です。
これらの最新技術を取り入れることで、「差し歯っぽい感じがまったくない」「まるで自分の歯のよう」という、より高い審美性を求める方に最適な治療が可能になっています。
特に前歯など目立つ部位の治療では、機能性だけでなく審美性にこだわることが、笑顔や自信にもつながります。

治療前に知っておくべき注意点
差し歯を白く美しく仕上げるための治療を受ける際には、いくつかのポイントを事前に確認しておくことで、仕上がりや満足度が大きく変わってきます。
以下の点を参考に、納得したうえで治療を進めましょう。
①現状の歯ぐきや歯の状態をしっかり確認する②色や形の希望をしっかり伝える
③治療後のケア方法を確認する
④素材ごとの特徴やデメリットを理解しておく
⑤治療期間と通院回数の目安を知っておく
①現状の歯ぐきや歯の状態をしっかり確認する
審美的な治療を行う前に、虫歯や歯周病、歯ぐきの腫れなどがないかを確認することが大切です。
基礎的な口腔環境が整っていないと、せっかくの差し歯も長持ちせず、早期にトラブルが起こる可能性があります。
②色や形の希望をしっかり伝える
「どのくらい白くしたいか」「自然な仕上がりがよいか」「前の歯よりも丸みを持たせたいか」など、ご自身の希望を歯科医師に明確に伝えることが重要です。
デジタル写真やシェードガイド(色見本)を使って、イメージを共有することも可能です。
③治療後のケア方法を確認する
美しく仕上げた差し歯も、日々の磨き方や定期的な検診があってこそ長持ちします。
磨き残しを減らすブラッシングのコツや、歯間ブラシ・フロスの使い方なども、事前にしっかり確認しておくことが大切です。
④素材ごとの特徴やデメリットを理解しておく
セラミックやジルコニアなど、それぞれの素材にはメリットだけでなくデメリットや注意点もあります。
たとえば、「ジルコニアは強度は高いが透明感はやや劣る」「セラミックは自然だが割れやすい」など、特性を理解したうえで選ぶと後悔しにくくなります。
⑤治療期間と通院回数の目安を知っておく
差し歯治療は1回で終わるケースもありますが、多くの場合は型取り・仮歯・本装着と数回に分けて行います。
事前に、大まかなスケジュールを確認し、仕事や家庭の予定と調整しやすいようにしておくことがおすすめです。

まとめ
いかがでしたか?
差し歯の変色は、素材の性質や接着剤、経年劣化、日常のケアの仕方によって少しずつ進行します。
見た目に違和感が出てきたとき、「もう古いから仕方ない」「放っておいても問題ない」と思ってしまいがちですが、そのままにせず歯科医院で相談してみることが大切です。
最後までお読みいただきありがとうございました。