「この頃、食べ物が美味しくない、味がわかりにくいような気がする…」という味覚の変化の解決法は?

「好きだった料理が、最近おいしく感じなくなった」
「何を食べても、同じ味がするような気がする」
「濃い味付けじゃないと満足できなくなってきた」
こんなお悩みはありませんか?
年齢とともに感じやすくなる味覚の変化は、実はお口の健康や生活習慣と深く関係しています。
味がわかりにくくなると、食事が楽しく感じられなくなるだけでなく、栄養不足や生活の質(QOL)の低下にもつながってしまいます。
今回は、年を重ねると出やすい「味覚の変化」について、原因やセルフケア、歯科医院でのサポートをご紹介します。
1. 味覚が変化する理由
味覚が変化する理由には、以下のような原因が考えられます。
① 味蕾の働きと加齢の影響
② 舌以外の要素
① 味蕾の働きと加齢の影響
味覚は、舌にある「味蕾(みらい)」という小さな器官が働くことで、「甘味・塩味・酸味・苦味・うま味」などを感じています。
味蕾は、加齢などの影響で数が減ったり、働きが鈍くなったりすると、味覚が低下していきます。

② 舌以外の要素
味を感じるには、舌の感覚だけでなく、唾液の分泌、におい、温度、口腔内の清潔さなども関係します。
「味がしないかも」と感じたときは、これら複数の要因が重なっていることが多いです。

2. 高齢者に多い味覚の変化とその原因
味覚の変化が起きるのは、下記のような理由が考えられます。
① 味蕾の減少
② 唾液の減少(ドライマウス)
③ 舌(舌苔)や口の中の清掃不足
④ 栄養不足(特に亜鉛)
⑤ 薬の副作用
⑥ 鼻の機能の低下
① 味蕾の減少
年齢とともに、味を感じる細胞(味蕾)は自然と減少していきます。
そのため、「味に敏感でなくなった」と感じる方が多くなります。

② 唾液の減少(ドライマウス)
唾液は、食べ物の成分を溶かして、味蕾に届けるという大切な役割を持っています。
唾液が減ると、味が伝わりにくくなり、味覚が鈍くなってしまいます。

③ 舌や口の中の清掃不足
舌の表面に汚れ(舌苔)がたまってしまうと、味蕾の働きが妨げられます。
また、詰め物の取れたままの虫歯などでどちらか一方で食べることが多かったり、お手入れの不足した入れ歯などはお口の中の環境が悪化し、味覚に影響します。

④ 栄養不足(特に亜鉛)
亜鉛は味蕾の働きを助けるミネラルです。
食事量や吸収率の低下によって、亜鉛不足になりやすく、味覚障害を引き起こすことがあります。

⑤ 薬の副作用
降圧剤、利尿薬、睡眠薬、抗うつ薬などの薬には、口腔内の乾燥(口渇)したり味覚異常を引き起こす副作用があります。
ポリファーマシーと呼ばれる薬の種類や服用している数が多くなるほど、影響も強くなります。

⑥ 鼻の機能の低下
実は味とにおいは密接に関係しています。
つまり嗅覚が鈍ると、味もわかりにくくなります。
鼻をつまんで食べ物をお口に入れると、味がわからなくなると思います。これをイメージするとわかりやすいでしょう。
加齢や鼻炎、嗅覚の障害なども味覚の低下に関わる要因になります。

3. 食事を楽しむために家でできる味覚ケア
食事を楽しむために、お家でできるケアとして、下記のようなものが挙げられます。
① 舌とお口の中を清潔に保つ
② よく噛んで唾液を出す
③ 亜鉛を含む食品を積極的にとる
④ 香りや見た目、温度にも気を配る
⑤ 水分をしっかりとる
① 舌とお口の中を清潔に保つ
歯みがきとあわせて、舌の表面もやさしくブラッシングしましょう。
専用の舌ブラシや、やわらかい歯ブラシで、奥から手前へ軽くなでるように清掃します。
強く磨きすぎると、舌の表面を傷つけますので、擦りすぎには気をつけてください。

② よく噛んで唾液を出す
しっかり噛むことで唾液が増え、味が感じやすくなります。
水分が少ない食材も、ゆっくりよく噛むことで、味わいが広がります。

③ 亜鉛を含む食品を積極的にとる
牡蠣、レバー、牛肉、卵、納豆などは、亜鉛を多く含む食材です。
バランスの良い食事を基本に、必要に応じて医師の指導のもと亜鉛を含む食材を積極的にとりましょう。

④ 香りや見た目、温度にも気を配る
もし味覚が鈍くなっても、香りや彩り、温度など五感を刺激する工夫で食事の満足度を高めることができます。
柚子、ショウガ、バジルなどの香りの強い食材を取り入れるのも対策としておすすめです。

⑤ 水分をしっかりとる
お口の中が乾いていると、味を感じにくくなります。
1日を通して、こまめに水分をとることを意識しましょう。

4. 歯科医院でできるサポート
歯科医院でできるサポートとして、下記のようなものがあります。
① 舌や粘膜、唾液の状態の確認
② 入れ歯やかみ合わせの調整
③ ドライマウス(口腔乾燥)のケア
① 舌や粘膜、唾液の状態の確認
舌に汚れがたまっていたり、粘膜に炎症があったり、唾液分泌が低下している場合は、味覚に影響が出ます。
歯科医師による専門的な視診と触診によって、見逃しやすい原因を明らかにすることができます。

② 入れ歯やかみ合わせの調整
入れ歯の厚みやズレがあると、舌の動きが制限され、味覚に影響することがあります。
入れ歯の調整や再製作によって、快適な使用感とともに味覚の改善が期待できます。

③ ドライマウス(口腔乾燥)のケア
保湿ジェルやスプレーを使用した粘膜保護、唾液腺マッサージの指導、生活習慣の見直しなどを行うことで、唾液量の改善を図ることが可能です。

5. まとめ
味がわからなくなることは、日々の食事の楽しみを奪ってしまうだけでなく、栄養不足や意欲の低下にもつながります。
「最近味が薄く感じる」「ごはんが楽しめない」そんな小さな変化も、ぜひ放置せずご相談ください。
お口のケアや生活の工夫で改善できることがたくさんあります。
味わうことは、人生を楽しむ力でもあります。
ご自身の健康のため、ご家族との団らんのためにも、味覚を守るケアを始めてみましょう。