高血圧の薬と歯肉増殖①
こんにちは。土呂駅あつ美歯科クリニックです。
先日、高血圧のお薬を服用されている患者さまから、歯磨きはお食事の後にちゃんとしているのに歯茎(歯ぐき)が腫れている気がするんです。血は出ていないんですが歯医者さんから見てどう思いますか?と質問を受けました。
そこで今回は高血圧のお薬の副作用による歯茎(歯ぐき)の腫れについてお話したいと思います。
目次
高血圧とは
病院やクリニックなどの医療機関において、診察室で測定した血圧が最高血圧140mmHg以上、あるいは最低血圧が90mmHg以上の場合は高血圧と診断されます。
現在のガイドライン上では120/80mmHg未満を正常血圧としています。
〜高血圧と診断されたら〜
食事療法
運動療法
薬物療法
これらの治療法を組み合わせて血圧をコントロールすることが必要になります。この中でも特に歯科と関連してくるものは、薬物療法です。ではなぜ歯科と関連しているのでしょうか。
〜薬物療法とは〜
高血圧の薬物治療には、血圧を下げる作用がある降圧薬と呼ばれる薬を使用します。
- 年齢・性別
- 高血圧の重症度
- 糖尿病や脂質異常症などがあるかどうか
- 副作用
など患者様の症状に合ったものを選択する必要があります。
〜血圧を下げる薬〜
主に7種類に分かれています。
①カルシウム拮抗薬
②アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)
③アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)
④利尿薬
⑤β(ベータ)遮断薬
⑥α(アルファ)遮断薬⑦ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRI拮抗薬)
以上が挙げられます。
この中でも主に処方されるのが、①と②になります。
①カルシウム拮抗薬
商品名
アダラート
アムロジピン
アムロジン
ノルバスク
ランデル
アテレック
カルブロック
コニール
などがあります。
最も多く使われている第一選択となるお薬で、日本では7割の患者さまが服用されているお薬です。もともと狭心症用のお薬なので高齢者にも安心して処方がされています。但し、グレープフルーツなどの柑橘類は相互作用と言って血圧が過度に下がってしまうことがあり、注意が必要になります。
②アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)
商品名
オルメテック
オルメサルタン
アジルバ
アジルサルタン
ミカルディス
テルミサルタン
2番目に多く使われているお薬です。腎臓の機能が低下している方、妊婦さんや授乳中の方には注意が必要です。
〜高血圧の薬の副作用〜
どんなお薬にも副作用はありますが、高血圧のお薬の中でも特に①カルシウム拮抗薬による副作用として、歯茎(歯ぐき)が『肥厚』と呼ばれる、見た目として容積や厚さが増大しているように見える副作用が発現することがあります。歯肉炎や歯周炎・歯周病と違い、膿を持つようなことはありません。これは『薬剤性の歯肉増殖』と呼ばれ、報告の中にはカルシウム拮抗薬を処方されている方の約20%に発現しているというものもあります。これが高血圧のお薬と歯科と関連するとお話した由縁です。
〜歯肉増殖〜
- 若い方
- 服用量が多い方
ほど重症になる傾向が報告されています。
歯間乳頭と呼ばれる、歯と歯の間の歯肉が少し膨らんだような程度のものから、本来なら見えているはずの歯のほとんどが隠れてしまう重症なものまであります。
〜薬剤性の歯肉増殖になってしまったら〜
①歯茎(歯ぐき)の腫れを感じたら、まずは歯科医院を受診されてください。薬剤の影響によるものなのか、歯磨き不足からくるものなのかを診断してもらいましょう。いずれの場合にも適切な歯磨きは非常に重要です。特に薬剤性の歯肉増殖の場合には、歯肉の増大により歯磨きがしにくくなるという悪循環を起こしかねません。重症の場合には、歯肉切除術という外科的に歯茎(歯ぐき)を切除することもあります。
②処方を受けている医師と相談して、処方薬を変更してもらうことも視野に入れましょう。
まとめ
歯肉増殖は、高血圧の薬の副作用として発現されることがあります。また磨き残しによる歯垢(プラーク)が溜まることで悪化しやすくなってしまいます。処方薬を変更することも視野に入れる場合もありますが、日頃の適切な歯ブラシを心がけ、丁寧に歯磨きをしましょう。
歯科医院での定期的なプロによるメンテナンスで清潔を保ちましょう。